TOP > 不動産売却の基礎知識 > 相続 > 遺言書の書き方と文例
遺言書の書き方と文例
遺言書の書き方と文例
遺言書では自筆証書遺言書の方法が多くの場合用いられます。自分だけでも書けて簡易だからです。自筆証書遺言書の書き方には特別の決まりはありませんが、どのように書いたらわからないものです。しかし、遺言書の様式には一定の決まりがあります。自筆証書遺言書の書き方の基本と書き方の文例を中心に紹介します。
目次
1. 遺言書の書き方
(1) 遺言書の作成の手順
(2)遺言書の書き方
2. 遺言書の文例
(1) 妻と子がいて妻を重視する場合
(2) 子に差がある相続の場合
(3) 事実婚・内縁の妻に財産を遺贈する場合
(4) 息子の嫁に遺贈する場合
まとめ
1.遺言書の書き方
(1) 遺言書の作成の手順
遺言書の作成の手順は次のとおりです。
➀相続人と相続割合の把握
誰が相続人であるのかを確認したうえで、法定相続分を確認します。
②財産の調査とリストアップ
金融資産は金融機関別、商品別にすべてリストアップします。不動産についても正確な物件内容を確認します。
また、マイナスの財産である借金や、住宅ローン・クレジットなどの残債も記録します。
③各相続人の貢献度や依存度の検討
貢献度や依存度に応じて、誰に、どの財産を、どの程度の割合で継承させるのかを決めます。
④財産の継承・処分方法を決める。
具体的な特定の動産、金融資産を個別に分割を決めます。不動産では、分割の場合は比率や分割の仕方などを決めます。
⑤遺言の内容を決めて草案を作成する。
⑥遺言の種類、方法を決める。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の中でどの種類で行うかを決めます。
種類による準備を進めます。
(2)遺言書の書き方
自筆証書遺言の場合、本文は自筆で書きます。ただし、相続する財産目録については民法改正でワープロでも作成可能となりました。公正証書遺言は公証人が作成します。また、秘密証書遺言は代筆やパソコンで作成することもできます(ただし、すべての用紙に自筆の署名と押印、日付が必須)。
①表題
表題は「遺言書」とします。「遺言状」でも構いません。
②相続する財産目録を作成します。
③相続分を相続人ごとに箇条書きします。
④相続させたい人について記すとき、続柄、氏名、生年月日を入れて、個人が特定しやすいようにします。
⑤遺言執行者の指定をする場合は、氏名、住所、連絡先、年齢などの要素を書いておきます。遺言執行者は遺産の管理や処分に対する一切の権利と義務を持ちます。
⑥付言事項は、必ずしも書かなければならないものではありません。また、法的効力があるわけではありませんが、自分の意思を伝えることができます。
⑦遺言の作成年月日と自筆署名、押印をします。
2.遺言書の文例
(1)妻と子がいて妻を重視する場合
「遺言書」
遺言者である旭太郎は、次のとおり妻・智子、長男・一男に遺言する。
第1条
別紙の財産目録第1及び、第2に記載する不動産を妻・智子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
第2条
別紙の財産目録第3に記載する預金口座及び、第4に記載する株式証券を長男・一男(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
第3条
本遺言書に記載のない財産が発覚した場合、その財産はすべて妻・智子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
(付言事項)
長年私の人生を支えてくれた妻・智子に改めて感謝します。智子には安心して老後を送れるために自宅家屋とその敷地を相続します。一男においては別に家を持っているため金融資産を法定相続持ち分よりは少なくなりますが相続します。2分の1より少ないですが理解してください。智子が亡くなれば自宅不動産は2次相続で一男が引き継ぐことになりますので理解してください。また、一男には、年老いた母親を支えてくれることを願います。
○○年○○月○○日
住所 千葉県・・・・・
遺言者 旭太郎 印
*財産目録
・第1 土地
所在:千葉県・・・・
地番:○○番○
地目:宅地
地積:200平方メートル
・第2 家屋
所在:千葉県・・・・
家屋番号:○○番○○
種類:居宅
構造:木造2階建
延べ床面積:〇〇平方メートル
・第3 預金口座
○○銀行 ○○支店 普通預金 支店番号 口座番号
・第4 株式証券
証券会社・・・・
株式市場 東証1部
株式銘柄・・・・株式会社
株式数・・・株
遺言者 旭太郎 印
(2) 子に差がある相続の場合
例えば長男、長女、次男がいて、同居する長男に法定相続よりも多めに相続させる場合は遺留分も考慮した遺言書を作成する事が肝要です。また気持ちを伝える為には付言事項も追加しておきます。
遺言書
遺言者目黒真一は次の通り遺言する。
第1条
遺言者は下記の有する財産を同居する長男・目黒和夫(昭和○○年○月○日生)に相続する。
1.土地
所在: 千葉県千葉市西千葉2丁目
地番: ○○番○○
地目: 宅地
地籍: 150平方メートル
2.自宅
所在: 千葉県千葉市西千葉2丁目
家屋番号:○○番○○
種類: 居宅
構造: 木造瓦葺2階建
床面積: 1階100平方メートル
2階70平方メートル
第2条
遺言者は○○銀行千葉支店に有する定期預金を次男・目黒次夫(昭和○○年○月○日生)に相続する。
定期預金 口座番号
第3条
遺言者は○○銀行東京支店に有する定期預金を長女・田中ゆう子(昭和○○年○月○日生)に相続させる。
定期預金 口座番号
第4条
遺言者及び祖先の祭祀を主催すべき者として長男・目黒和夫を指定する。
付言事項
親と同居して長年面倒を見てくれて、今後も目黒家を継いでもらう長男・和夫に家屋敷を相続させたので、長女・ゆう子、次男・次夫には法定相続分より少なくなってしまったが今後も兄弟仲良く暮らして欲しい。
○○年○月○日
東京都渋谷区渋谷○丁目○番○号
遺言者 目黒真一 印
(3) 事実婚・内縁の妻に財産を遺贈する場合
内縁の妻に財産を遺贈したい場合の遺言書の書き方
作成のポイント
①公正証書で遺言を作成する。
②遺言執行者を指定する。
③遺留分を考慮する。
内縁の妻に財産を残したい場合は必ず遺言書が必要です。自筆証書遺言ではなく公証役場で公正証書遺言を作るのが適切です。内縁の妻は相続人ではないので名前、誕生日、同居している旨などを明確にします。内縁の妻に対しては相続人ではないので相続させるではなく遺贈と明記します。
不動産については相続人であれば遺言書で単独で登記申請できますが、相続人ではない内縁の妻への遺贈は登記の単独申請ができません。他の相続人全員との共同申請をする必要となります。スムーズに内縁の妻に遺贈したい場合は遺言執行人を指定しておきます。遺言執行者は単独で登記等の申請を実行できますのでスムーズな相続手続きが可能です。
遺言書
私、遺言者・岡田栄治は次の通り遺言する。
第1条
遺言者は下記の財産を同居中の内縁の妻である渋谷総子(昭和○○年○月○日生)に遺贈する。
1.土地
所在: 東京都渋谷区渋谷2丁目
地番: ○○番○○
地目: 宅地
地籍: 300平方メートル
2.自宅
所在: 東京都渋谷区渋谷2丁目
家屋番号:○○番○○
種類: 居宅
構造: 木造瓦葺2階建
床面積: 1階100平方メートル
2階75平方メートル
3.その他遺言者に属する一切の財産は、内縁の妻・渋谷総子に遺贈する。
第2条
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第3条
1.遺言者はこの遺言の執行者として下記の者を指定する。
事務所: 東京都港区赤坂○丁目○番○号
職業: 弁護士
氏名: 赤坂一郎
生年月日:昭和○○年○月○日
2.遺言執行者は、この遺言を執行するのに必要な一切の権限を有し、この遺言を執行するに際し、法定相続人の捺印を要せず単独で、不動産、預貯金等の名義変更、解約、払戻請求等をする事ができるものとする。
○○年○月○日
東京都渋谷区渋谷○丁目○番○号
遺言者 岡田栄治 印
(4) 息子の嫁に遺贈する場合
相続人ではないが介護などで世話になった息子の嫁などに財産を譲る場合は遺贈となります。その場合の遺言書の書き方です。
遺言書
私、遺言者・成田徹は次の通り遺言する。
第1条
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第2条
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第3条
遺言者名義の株式(○○証券○○支店に預託)を長男・成田哲司の嫁である成田朝子(昭和○○年○月○日生)に遺贈する。
①〇〇製薬の株式の全部
②〇〇製菓の株式の全部
第4条
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○○年○月○日
千葉県千葉市西千葉○丁目○番○号
遺言者 成田徹 印
まとめ