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自筆証書遺言の財産目録はパソコンでの作成も可能
自筆証書遺言の財産目録はパソコンでの作成も可能
自筆証書遺言は改ざんなどを防ぐためにすべて自筆での記載が必要でした。しかし、財産目録については財産が多い場合は書く手間がかかり、2019年の民法改正により財産目録部分のみパソコンでワープロや表計算ソフトによる制作が可能となりました。遺言書の財産目録の意味や記載の仕方、財産目録においても自筆署名や押印が必要な部分、ケースなどについて説明します。
目次
1. 遺言書の財産目録とは
2. 自筆証書遺言の財産目録はパソコンでの作成も可能に
3. 遺言書の財産目録の記載事項
(1) 現金・預貯金
(2) 有価証券
(3) 不動産
(4) 借入金
4. 財産目録の注意点
(1) 署名押印の方法
(2) 財産目録の添付方法
(3) 財産目録の記載の訂正方法
(4) 記載漏れに注意
まとめ
1. 遺言書の財産目録とは
財産目録とは、遺言者が所有するすべての相続財産を記載したリストのことです。
財産目録は遺言書に必須なものではありませんが、財産がある場合は、財産の内容の詳細やどの相続財産を誰が相続するのかなどを、具体的に相続人へ伝える上で必要となるものです。
遺言書に記載する相続財産は、その財産が特定できる情報を詳しく記載しなければなりません。例えば預金で、銀行名、支店名、口座の種類、口座番号、口座名義などを記載します。
相続財産が多い場合には、財産目録を作成するのが通常です。
2.自筆証書遺言の財産目録はパソコンでの作成も可能に
財産の内容すべてを自筆する作業は、遺言者にとって大きな負担であったことから、2019(平成31)年1月13日施行の民法改正により、自筆証書遺言の財産目録はパソコンやワープロなどでの作成が認められることになりました。
ただし、自筆ではない財産目録は、偽造・変造の可能性が高くなるため、遺言者の署名と押印が必要となっています。
また、勘違いしてはいけないのは、パソコンを利用して作成できるのは財産目録だけで、遺言書本体は必ず、すべてを自書しなければなりません。
さらに、不動産なら全部事項証明書、金融機関の口座なら通帳のコピーなど既存の資料で、財産目録に替えることができます。
3.遺言書の財産目録の記載事項
財産目録の書き方については特に決まりはありませんが、記載する内容は次のようなものです。
(1) 現金・預貯金
現金は、特定できるように保管場所を記載します。
預貯金は、銀行名、支店名、口座種類、口座番号などを記載します。残高は記載する必要はありません。
(2) 有価証券
銘柄、株式数、証券会社名、口座情報などの情報を記載します。
(3) 不動産
登記簿謄本を取得して、不動産番号、所在地地番、家屋番号など正確に書き写します。登記簿謄本は財産目録に添付しておくとより確実です。
(4) 借入金
相続財産はプラスの財産だけではありません。住宅ローンなどの借入金などのマイナス財産がある場合には記載します。
借入金は、借入残高、借入先の情報を記載します。金銭消費貸借契約書や返済表を添付しておくと、より分かりやすいでしょう。
4.財産目録の注意点
財産目録を作成する際の注意点を解説します。
(1) 署名押印の方法
前述した通り、パソコンで財産目録を作成した場合には、署名と押印が必要になります。
使用する印鑑は、実印である必要はなく、また遺言書の本文と異なるものでも構いません。
署名押印は、財産目録「1ページごとに必要」である点に注意しましょう。
(2) 財産目録の添付方法
財産目録を遺言書にどう添付するかに特に決まりはありません。
遺言書とホッチキス止めをする、遺言書と同じ封筒に入れるなど、遺言書と同時に読める状況にしておくと良いでしょう。
(3) 財産目録の記載の訂正方法
財産の状況は生きている間、常に変化するため、財産目録に訂正が生じることがあります。
改ざん防止のために訂正方法が民法に定められています。(民法第968条3項)自筆によらない財産目録であっても、遺言書の本文と同様の訂正を行います。
訂正は次のように行います。
・遺言者が自筆で行う。
・訂正箇所に二重線を引き、二重線の上に押印し、その上などに正しい文字を記載する。
・遺言書の余白には「〇行目〇文字削除〇文字加入」などと自書し、署名押印する。
(4) 記載漏れに注意
財産目録には、遺言者の相続財産のすべてが記載されていることが望ましいですが、人が作成するものなので漏れがあることもあります。
漏れた相続財産については、その相続人の指定がない状態にあるため、遺産分割協議を行わなければなりません。
また、万が一、漏れがあった場合に備えて、遺言書に「財産目録に記載していない財産は○○に相続させる」と包括的に記載しておく方法もあります。
まとめ