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相続における「寄与分」とは PART2

相続における「寄与分」とは PART2

 

(PART1より)

目次

1. 寄与分とは

2. 寄与分が認められる要件

(1) 相続人であること

(2) 被相続人の財産の維持または増加に貢献した行為を行ったこと

(3) 期待される以上に貢献した行為である「特別の寄与」を行ったこと

(4) 無償ないし無償に近い行為を行ったこと

(5) 継続性がある行為を行ったこと

3. 寄与分が認められる代表的な類型

(1) 被相続人の事業に労務の提供をした家事従事型

(2) 被相続人に財産の給付をした金銭等出資型

(3) 被相続人の療養看護に従事した療養介護型

(4) 被相続人の出費を防いだ扶養型

(5) 被相続人の財産を管理した財産管理型

4. 寄与分の算定方法

(1) 寄与分が家事従事型の場合の算定式

(2) 寄与分が金銭等出資型の場合の算定式

(3) 寄与分が療養看護型の場合の算定式

(4) 寄与分が扶養型の場合の算定式

(5) 寄与分が財産管理型の場合の算定式

5. 寄与分がある場合の相続分の計算方法

6. 寄与分を認めてもらうための手続き

(1) 遺産分割協議

(2) 遺産分割調停

(3) 遺産分割審判

まとめ

 

4.寄与分の算定方法

 

寄与分の算定は様々な事情を考慮するという規定があるだけで、明確な基準があるわけではありません。ただし、目安となる数字の算定では次のようなものがあります。

 

(1) 寄与分が家事従事型の場合の算定式

 

相続人が故人の事業を手伝っていた場合、本来受け取るべき給与額が寄与分となります。ただし、相続人が故人と同居しており、相続人の生活費の負担が軽減されていた場合はその分を控除します。家事従事型の寄与分の算定式は次のとおりです。

 

<家事従事型の寄与分の算定式>

*寄与者が受け取るべき年間の給付額×(1-生活費控除割合)×寄与年数=寄与分額

 

(2) 寄与分が金銭等出資型の場合の算定式

 

基本的に贈与した金額が寄与分となりますが、そのままの金額ではなく、貨幣価値の変動や裁量的な割合を考慮して算定します。金銭等出資型の寄与分の算定式は次のとおりです。

 

<金銭等出資型の寄与分の算定式>

*贈与額×貨幣価値変動率×裁量的割合=寄与分額

 

(3) 寄与分が療養看護型の場合の算定式

 

本来であればお金を支払って付添介護人に介護をしてもらうところを相続人が介護をしていた場合、付添介護人に支払うはずであった費用が寄与分となります。療養看護型の寄与分の算定式は次のとおりです。

 

<療養看護型の寄与分の算定式>

*付添介護人の日当額×療養看護日数×裁量的割合=寄与分額

 

(4) 寄与分が扶養型の場合の算定式

 

通常考えられる扶養の範囲を超えて生活費を負担していた場合、次の算定式で寄与分を計算します。なお、法定相続分とは民法で定められた相続分の目安です。

 

<扶養型の寄与分の算定式>

*負担した扶養額×期間×(1-寄与相続人の法定相続分割合)=寄与分額

 

(5) 寄与分が財産管理型の場合の算定式

 

不動産の売却手続きや管理を相続人が代わりにおこなった場合、第三者に委任した際にかかる費用が寄与分となります。財産管理型の寄与分の算定式は次のとおりです。

 

<財産管理型の寄与分の算定式>

*管理や売却を第三者に委任した場合の報酬額×裁量的割合=寄与分額

 

5.寄与分がある場合の相続分の計算方法

 

寄与分がある場合、まず遺産総額から寄与分を差し引きます。次に寄与分を引いた金額を相続人全員で分割します。そして、寄与分がある相続人の相続分に寄与分を足し合わせます。寄与分がある相続人と寄与分がない相続人の相続分の計算式は次のとおりです。

 

*寄与分がある相続人の相続分の計算式

(遺産総額-寄与分)×法定相続分+寄与分=相続分

 

*寄与分がない相続人の相続分の計算式

(遺産総額-寄与分)×法定相続分=相続分

 

6.寄与分を認めてもらうための手続き

 

前提として、寄与分は自ら主張する必要があります。

寄与分を主張する場は「遺産分割協議」、「遺産分割調停」、「遺産分割審判」があります。

 

(1) 遺産分割協議

 

遺産分割協議は相続人間である当事者の話し合いの場であり、寄与分の主張、請求では基本的なものです。

 

(2) 遺産分割調停

 

遺産分割協議で話がまとまらず、遺産の相続配分が決まらなかった場合は遺産分割調停を申し立て、相続分を決めることになります。

遺産分割調停は遺産分割協議と異なり、家庭裁判所において調停委員が相続人と話し合いをしながら、寄与分の問題解決を図ります。

 

遺産分割調停で話し合いがまとまれば、遺産分割調停で合意した内容がまとめられた文章である調停証書が作成されます。調停証書は法的効力があり強制力があります。

 

(3) 遺産分割審判

 

遺産分割調停でも相続人間の意見が合わず、相続分が決まらなかった場合には遺産分割審判が行われます。

遺産分割審判は「裁判」であるため、法的な根拠を元に主張をすることが必須となり、相続分も法律に基づいたものとなります。そのため、寄与分の主張が難しくなり、認められづらくなります。

このように遺産分割審判に移行してしまうと、寄与分が認められず、法律に基づいた相続分で遺産相続することになる可能性が高くなります。

 

遺産分割審判で審判が下されると、遺産の分割方法が記載された審判書が発行されます。審判書には法的な強制力があります。

 

まとめ

 

・寄与分とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について、特別の寄与をした者がある場合他の相続人よりもその者に相続財産を多く認める制度です。
・寄与分が認められる要件には次のような点があります。
➀相続人であること

ただし、民法改正により、2019年7月1日から「被相続人の相続人ではない親族」の看護療養などの一定の要件に適合した場合には特別寄与料が認められるようになりました。長男の嫁などへの考慮です。

②被相続人の財産の維持または増加に貢献した行為を行ったこと
③期待される以上に貢献した行為である「特別の寄与」を行ったこと
④無償ないし無償に近い行為を行ったこと
⑤継続性がある行為を行ったこと
・寄与分が認められる代表的な類型には次のようなものがあります。
➀被相続人の事業に労務の提供をした家事従事型
②被相続人に財産の給付をした金銭等出資型
③被相続人の療養看護に従事した療養介護型
④被相続人の出費を防いだ扶養型
⑤被相続人の財産を管理した財産管理型
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