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口頭での遺言は有効か?
口頭での遺言は有効か?
高齢の両親から、実家に戻った時に、「この家はあなたにあげるから」、「私に万が一のことがあったら○○の土地はあなたにあげるから」といった口約束をしてもらったことがあるかもしれません。このような口約束・口頭での遺言は、相続の場で有効なのでしょうか?口頭の遺言の法的効力の有無と、確実に被相続人の意思を残すために選ぶべき方法について解説します。
目次
1. 口頭での遺言は有効か?
(1) 遺言は「要式行為」
(2) ビデオメッセージや音声による遺言も無効
2. 「贈与」という方式であれば、口頭でも有効なケースがある。
3. 口頭での遺言をそのまま認めるわけにはいかないが、遺産分割協議で被相続人の意思を確認し承認する。
4. その他、遺言が無効になる場合とは?
(1) 単独で作っていない遺言書
(2) 内容、形式に欠陥(瑕疵)がある遺言書
まとめ
1.口頭での遺言は有効か?
結論からいってしまうと、口頭での遺言は「無効」です。
(1) 遺言は「要式行為」
そもそも遺言は民法が定める形式に従って作成することが義務付けられている民法第960条の記載があります。
*民法第960条
「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」
遺言は「要式行為」であり、要式行為とは、法律で定められた形式で作成することが必要な行為のことです。要式行為である以上、定められた方式以外で作成してしまうと無効になってしまいます。
(2) ビデオメッセージや音声による遺言も無効
口頭だけでなく、ビデオメッセージや音声による遺言も要式として認められていないため当然ながら無効です。音声やビデオでは、「財産目録以外の全文が自署」、「署名・押印が必要」といった条件を満たしていません。法律で定められた書面以外の何らかの方法で遺言が残されていたとしても相続の場では活かされません。
2.「死因贈与」という方式であれば、口頭でも有効なケースがある。
相続の遺言書以外では、贈与において死因贈与や生前贈与という方法を選択することで口頭での約束が実現する可能性もあります。
遺言は一定の方式に従って書面で作成する必要があるため、口頭での遺言は認められませんが、被相続人の死亡による相続に関連したものでは死因贈与(贈与者の死亡によって効力を生じる贈与)があり、死因贈与として効力が認められる可能性があります。
死因贈与は贈与という契約であり、契約は口頭(口約束)でも成立するためです。ただし、口頭での契約が成立するためには口約束があったことを立証できるかが要件になり、次のような場合には立証できると考えられます。
①口約束をした時のやり取りが録音・録画されている場合
口約束をした時のやり取りが録音・録画されている場合には立証ができます。
②客観的に中立な第三者(例:医者など)の証言がある場合
録音や録画がない場合でも、客観的に中立な第三者(例:医者など)が立ち会っており、当該第三者が証言してくれる場合は、立証の可能性はあります。
ただし、書面によらない死因贈与については、贈与という形態のために、贈与者の死亡前に贈与者が撤回することは原則として可能であること、また、贈与者の死亡後であっても、相続人において撤回することができると解されていることには注意が必要です。
3.口頭での遺言をそのまま認めるわけにはいかないが、遺産分割協議で被相続人の意思を確認し承認する。
口頭での被相続人の約束は嘘でない限り、財産の使い方や誰かに託したいという意思表示でもあります。
相続人が一定の範囲で納得できることもありえます。相続においては財産を譲る人の意思を尊重することが大切です。つまり、口約束であってもそれが事実であれば、一定の範囲で他の相続人が了解できれば遺産分割協議としてまとめます。
被相続人が生前に誰かに特定の遺産を与えたい時は、当人だけへの口約束ではなく、その他の相続人全員がいるところで、事実として他の相続人が認識できるように説明し、承諾を得ることが重要です。
4.その他、遺言が無効になる場合とは?
(1) 単独で作っていない遺言書
遺言書は本人の意思の表れであることが担保されている必要があります。複数人が共同で1つの遺言書を作成した場合は無効です。
(2) 内容、形式に欠陥(瑕疵)がある遺言書
遺言書の内容に不備があった場合、その遺言書の効力は発生しません。
たとえば自筆証書遺言書で財産目録以外が本人の直筆でない場合は無効です。
そのほか、以下のような場合には有効な遺言とは認められない可能性があります。
・内容では、次のようなものは無効です。
①遺言者本人の意思によらない場合
②相続人が詐欺や脅迫といった方法で作成させた場合
・形式では、次のようなものは無効です。
①作成日の日付がない場合
②書き損じが正規の方法で訂正されず、そのままになっている場合
③訂正箇所に捺印がない場合
④遺言書本文がパソコンのワープロソフトで作成されている場合(財産目録を除く)
⑤自筆証書遺言書で、誰かの代筆による場合
まとめ