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自己破産をした人の相続権は?相続に影響のある場合とは?
自己破産をした人の相続権は?相続に影響のある場合とは?
自分の事業が失敗し倒産した場合や、知人が事業をやる際の連帯保証人になっていて事業に失敗した場合、また、大きな融資を受け投資に失敗した場合など自己破産をする場合があります。その時に親などに相続が発生し自分が相続人であった場合に相続権はあるのでしょうか?また、相続に影響がある場合はどのようなものでしょうか?自己破産と相続の関係について説明します。
目次
1. 自己破産とは
(1) 自己破産とは?
(2) 自己破産で財産が処分される場合
2. 自己破産をした人は相続できるのか?
3. 自己破産した人が遺産相続できる条件
(1) 破産手続き開始決定前に相続が発生したケース
(2) すでに遺産分割協議が終わっている場合
(3) まだ遺産分割協議をしていない場合
4. 自己破産による遺産相続への影響を避けるなら「相続放棄」が有効
(1) 相続放棄とは
(2) 相続放棄したらどうなるのか?
まとめ
1.自己破産とは
(1) 自己破産とは?
自己破産とは、財産、収入が不足し借金返済の見込みがないこと(支払不能)を裁判所に認めてもらい、法律上、借金の支払い義務を免除してもらう制度です。
簡単に言うと、客観的にみて借金の返済ができないので、借金を帳消しにしてもらう手続きです。ただし、公租公課など一部の返済義務は自己破産をしても帳消しにはなりません。
(2) 自己破産で財産が処分される場合
自己破産手続きでは、生活に必要な範囲を超える一定の財産が処分されます。
次の3つの条件を満たす場合、その財産は自己破産手続きにおいて処分される可能性が高いでしょう。
①破産手続開始時に債務者(破産する人)に属しているもの
②差押え可能であるもの
③価値が一定の基準(東京地裁では現金を除く財産について20万円)を上回るもの
ここで着目していただきたいのが、「破産手続き開始時」に所有している財産に限られることです。開始決定後に所有するに至った財産(新得財産)は、自己破産においても処分されません。
2.自己破産をした人は相続できるのか?
自己破産の目的は、債務者の経済的再生を図ることなので、自己破産後の資産形成に関して制限はありません。そのため、自己破産をした人でも相続はできます。
そもそも相続人になることのできない人は、民法第891条で次の5つに定められています。
自己破産をしたことは相続欠格事由に該当しません。
これらの事情が認められる場合には「相続欠格」とされ、法律上当然に相続人になれません。
①被相続人(例:冒頭の事例における父親)や自分と同等若しくは自分に優先する相続人に対する故意による殺人または殺人未遂、殺人予備で刑に処された人(民法第891条1号)
②被相続人を殺害した犯人を知っているのに、告発・告訴をしなかった人(ただし、是非の弁別がない人や犯人が自分の配偶者若しくは直系血族であった人を除く)(同2号)
③詐欺や強迫によって被相続人の遺言の作成や撤回などを妨げた人(同3号)
④詐欺や強迫によって被相続人に遺言の作成や撤回などをさせた人(同4号)
⑤被相続人の遺言を偽造・変造したり破棄・隠匿をしたりした人(同5号)
3.自己破産した人が遺産相続できる条件
自己破産した人が相続人になったとき、遺産を受け取れるのでしょうか?
実はこの問題は「遺産相続の時期」に大きく左右されます。
相続開始が「破産手続き開始決定前」なら、自己破産した人の財産として処分対象となり遺産相続できません。
一方、「破産手続き開始決定後」なら基本的に自分で遺産分割協議を進めて遺産を受け取れます。
破産手続き開始決定さえ下りれば、その後に遺産相続が起こっても、基本的に遺産は処分対象になりません。破産者本人が遺産分割協議に参加して遺産相続方法を決められます。
(1) 破産手続き開始決定前に相続が発生したケース
「破産手続き開始決定時」に存在する破産者の財産なので処分され、債権者へ配当されてしまいます。よほど少額でない限り、破産者の手元に残すことはできません。
(2) すでに遺産分割協議が終わっている場合
破産前に遺産分割協議が終わっている場合には、破産者の手元に財産が残っている限り相続財産が配当対象になります。
たとえば破産者が過去に300万円の預金を相続し、100万円を使ってしまったが手元に200万円残っていれば、200万円が債権者へ配当されます。
財産が手元に残っていない場合には基本的に配当対象になりません。ただし、かつて相続した金額が大きければ裁判所から「財産隠し」を疑われ「何に使ったのか」報告を求められる可能性が高いと考えられます。
(3) まだ遺産分割協議をしていない場合
破産手続き開始決定前に遺産相続が発生し、手続き開始決定時にまだ遺産分割協議が済んでいない場合は、破産者本人は遺産分割協議を進められません。裁判所から選任された「破産管財人」が遺産分割協議を進めます。
すでに述べたとおり、遺産分割協議前に破産すると遺産は没収されてしまいます。その手続きの流れは次のようになります。
①法定相続分が破産者の「財産」になる。
自己破産をしたときに遺産分割未了の状態だと「法定相続分」が破産者の財産とみなされます。
②破産管財人が遺産分割協議に参加する。
裁判所で破産手続き開始決定が下りると、破産者本人は財産管理権を失い破産管財人が財産を管理し始めます。そこで遺産分割協議も破産管財人が行います。
具体的には破産管財人が裁判所の許可を受けて、他の相続人と話し合い、遺産の分け方を決定します。また、破産管財人は破産した人の相続財産を換価して、債権者へ配当します。破産者は遺産を相続しても、遺産は債権者へ配当され、財産より債務額が多ければ遺産は失われてしまいます。
③管財事件になって負担が重くなる。
相続発生後、遺産分割協議前に破産すると破産管財人が必要になり「管財事件」になる可能性が高まります。管財事件では、財産が一定以上ある人が破産するときの複雑な手続きが必要です。破産管財人による高額な予納金が発生し、手続きも長期間かかります。また、裁判所で何度も債権者集会が開かれそのたびに裁判所へ行かなければなりません。
4.自己破産による遺産相続への影響を避けるなら「相続放棄」が有効
破産手続き開始決定前に遺産分割協議が済んでいない場合、そのまま自己破産を申し立てると管財事件になったり、遺産が失われたりしデメリットがあります。そこで、不利益を防ぐ方策として、「自己破産前に相続放棄する方法」があります。相続放棄をするかどうかは、相続人が自由に決めることができます。
(1) 相続放棄とは
相続放棄とは、家庭裁判所へ申述することによってすべての遺産を相続しないための手続きのことです。相続放棄したら、その人ははじめから相続人ではなかったことになります。
(2) 相続放棄したらどうなるのか?
相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったものとみなされるため、自身が相続することはできませんが、相続財産が自己破産手続きで処分されることはありません。
遺産を相続しないので、破産管財人や債権者に法定相続分を取られず、他の相続人に迷惑をかけずに済みます。
自身が相続放棄した財産は、相続放棄をしなかった他の相続人に受け継がれ、他の相続人の遺産額が増えることになります。