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相続における税務上の実子と養子の相違は?
相続における税務上の実子と養子の相違は?
税務上は、むやみに養子の数を増やすことは相続税上問題が生まれます。そのため、普通養子縁組の場合には一定の養子の数の制限規定が設けられています。また、被相続人の直系卑属(孫やひ孫)が養子である場合には、将来の相続税を回避する狙いがあると見なされ、その者の相続税額については、原則として、相続税額が2割加算されます。本記事では、これら養子の税務上の取扱いを紹介します。
目次
1. 相続における実子と養子の同一性
2. 養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組がある。
3. 法律上の養子の数について
4. 養子と代襲相続の関係
(1) 代襲相続とは
(2) 養子と代襲相続の関係
5. 相続税に関わる法定相続人の人数と養子との関係
(1) 相続税における普通養子縁組による養子の数の算定制限
(2) 相続税の算定上実子として扱われる者
6. 養子に関連し相続税額が2割加算される場合
(1) 相続税額の2割加算とは
(2) 養子の取扱い
まとめ
1.相続における実子と養子の同一性
実子と養子は「実際に血がつながっているかどうか」で判断され、血縁のある子どもは実子と呼び、養子縁組をした子どもは養子と呼びます。
また、血のつながりのある親族を「自然血族」といい、養子縁組を行った場合は法律上の血族の意味で「法定血族」と呼びます。
養子縁組によって法定血族となった養子は、法律上自然血族と同様の扱いを受け、相続においても実子と養子の持つ権利は同じです。
2.養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組がある。
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。
特別養子縁組とは、養親となる者の請求により家庭裁判所の審判によって成立する縁組です。普通養子縁組と特別養子縁組の主な相違は次のような点です。
①普通養子には年齢制限がありませんが、特別養子は原則6歳までです。
②普通養子は、当事者の合意により成立します(養子の年齢が養親より下であることが条件)が、特別養子は家庭裁判所の審判によって成立します。
③特別養子縁組が成立すると、実親との間の親子関係は終了します。一度縁組が成立すると、原則として離縁は認められません。
④特別養子は、実親との間で相続関係はなくなり、実親が死亡しても相続権はありません。
一方、普通養子は、実親・養親が死亡した場合、両方からの相続権があります。
3.法律上の養子の数について
民法では、養子の数自体について原則として制限がありません。
ただし、相続税法では、控除を受けられる法定相続人の数に算入される養子の数に次の制限を設けています。これは、課税負担の公平を保つ意味からです。
4.養子と代襲相続の関係
(1) 代襲相続とは
代襲相続とは、相続人である子、または兄弟姉妹が、相続が開始した時点で既に死亡しているなどの場合、その相続人の子や孫などの直系卑属が代わって相続人となることです。
(2) 養子と代襲相続の関係
養親の相続において、養子がすでに亡くなっており、その養子に子供がいる場合、それが養子縁組前からいる子供なのか、養子縁組後にできた子なのかで扱いが異なります。
民法第809条で、養子は「縁組の日から」養親の嫡出子の身分を取得します。この「縁組の日から」について、判例では養子縁組前に生まれていた子は、養親との間で法定血族関係を生じず、養親の直系卑属に当たらないとされています。
つまり、養子縁組前に生まれていた子には代襲相続が認められません。
なお、これはあくまで養親の相続についてであり、普通養子縁組では養親だけでなく実親の相続もできるため、実親の相続においては普通養子縁組では通常の代襲相続となります。
特別養子縁組では、実親との相続関係が認められないため、代襲相続はありません。
5.相続税に関わる法定相続人の人数と養子との関係
法定相続人とは民法で定められた相続人をいいますが、養子は実施と同様当然法定相続人となります。ただし、税法から言えば法定相続人が多ければ基礎控除額が増え相続税の節税につながります。そのため税務上、法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、税の公平性の観点から一定数に制限されています。
相続に置いて法定相続人の数が影響する項目は次の4つです。
➀基礎控除額:3,000万円+600万円×(法定相続人の数)
②死亡保険金の非課税限度額:500万円×(法定相続人の数)
③死亡退職金の非課税限度額:500万円×(法定相続人の数)
④相続税の総額の計算
(1) 相続税における普通養子縁組による養子の数の算定制限
養子である法定相続人の数を無制限に加算すると、相続税回避が可能となってしまいます。
そこで、普通養子縁組の場合には、相続税の計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、次のとおり一定数に制限されています。
①被相続人に実子(代襲相続人も含む)がいる場合
被相続人の養子のうち「1人のみ」、法定相続人の数に含めることができます。
②被相続人に実子がいない場合
被相続人の養子のうち「2人まで」、法定相続人の数に含めることができます。
ただし、上記いずれの場合も、相続税の負担を不当に減少させる目的の養子と認められる場合は、法定相続人の数から除外される場合があります。
(2) 相続税の算定上実子として扱われる者
次のいずれかの者は、上記(1)の数の制限は受けず、すべて法定相続人の数に含まれます。
①特別養子縁組により被相続人の養子となった者
②被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
③被相続人と配偶者との婚姻前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となった者で、その婚姻後にその被相続人の養子となったもの
④被相続人の実子、養子又はその直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため相続人となった者の直系卑属
6.養子に関連し相続税額が2割加算される場合
(1) 相続税額の2割加算とは
相続、遺贈又は相続時精算課税贈与により財産を取得した者が、その被相続人の一親等の血族(代襲相続人となったその被相続人の直系卑属を含む)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。
被相続人の子や配偶者以外が相続人になる場合の規制になります。
(2) 養子の取扱い
被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の直系卑属(孫やひ孫)は、その者が代襲相続人となっている場合を除き、相続税額の2割加算の対象になります。
いわゆる「孫養子」という形で自分の孫を普通養子として迎えることがあります。この場合、その孫は祖父母の養子であり、実親の実子となります。「孫養子」は「祖父が亡くなったとき、養子である孫が法定相続人となり、相続を1代飛び越して行うため、相続税の負担の公平性を侵すと考えられます。そのため、税額が重くなっています。
(例)
① 祖父Aの相続において父Bが存命の場合(孫養子をCとする)
Cの法定相続分は父Bと同じですが、相続税が2割増しとなります。
② 祖父Aの相続において父Bが先に死亡している場合
Cは養子として祖父Aの相続人だけでなく、父Bの代襲相続人にもなります。Cは父Bの代襲相続人となるので例外的に相続税の2割加算はありません。