TOP > 不動産売却の基礎知識 > 相続 > 小規模宅地の特例を受けられない場合とは?
小規模宅地の特例を受けられない場合とは?
小規模宅地の特例を受けられない場合とは?
亡くなった人(被相続人)が保有していた自宅や事業・貸付用土地の評価を大きく減額してもらえる「小規模宅地の特例」については、複雑な要件があるためいざとなったら特例を受けられない場合があります。まず、小規模宅地等の特例の対象となる宅地には、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等小規模宅地の4つがありますが、この記事では一般的な個人を対象にした特例の特定居住用宅地等を対象にします。小規模宅地の特例の要件と適用を受けられない場合について説明します。
目次
1. 小規模宅地(特定居住用宅地等)の特例の要件について
(1) 相続前の用途
(2) 相続後の宅地の取得者の利用状況
(3) 面積での上限
(4) 小規模宅地の特例の適用対象者
(5) 同居の有無などの特例の要件
2. 小規模宅地(特定居住用)の特例が受けられるかどうか?
まとめ
1.小規模宅地(特定居住用宅地等)の特例の要件について
小規模宅地の特例を受けられる要件ためには、相続前の用途と、相続後の取得者及び利用状況について要件が設けられていて、その両方を満たした場合に適用があります。要件は次の通りです。
(1) 相続前の用途
相続前の用途は、特定居住用宅地等では、被相続人や同一生計親族の居住用です。
したがって保養を目的とする別荘や、生活を共にしない親族などが使用している宅地は適用を受けることができません。
(2) 相続後の宅地の取得者の利用状況
利用状況とは相続税の申告期限までの間、宅地の取得者がその宅地を継続して利用しているかどうかということです。
(3) 面積での上限
330㎡まで相続税評価額を80%減額することができます。
(4) 小規模宅地の特例の適用対象者
相続で特例の適用を受けることができる人は、相続又は遺贈により特例の対象となる宅地等を取得した個人で、かつ被相続人の親族に限られています。
(5) 同居の有無などの特例の要件
要件とは以下の通りです。
①配偶者が取得した場合
無条件で特例を受けることが可能です。
②取得した親族が被相続人と同居している場合
申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に住み続けることが必要です。
③取得した親族が被相続人と同居していない場合
被相続人の配偶者又は被相続人と同居している相続人がいない場合には、次の要件を満たすことが必要です。
a. 相続開始前3年以内に、その親族やその親族の配偶者・3親等内の親族・同族会社等が所有する家屋(相続開始直前に被相続人が住んでいた家屋を除く)に住んだことがないこと
b. 相続時にその親族が住んでいる家屋を過去に所有していないこと
c. 申告期限まで引き続きその宅地等を所有していること
売却などをしてしまうと、本特例を受けられないこととなります。
④被相続人の同一生計親族が取得した場合
申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその親族が住み続けることが必要です。
⑤被相続人の配偶者や同居親族以外の親族が相続した場合
被相続人に配偶者も同居親族もいない場合に、相続開始日の直前3年以内にマイホームに住んだことがない別居親族がこの土地を相続し、相続税の申告期限まで所有を継続すれば、本特例が受けられます。賃貸住まいや会社の寮住まいをしている子が親の自宅を相続したような場合です。既にマイホームを持ってそこに住んでいる子
は特例が受けられないこととなります。
2.小規模宅地(特定居住用)の特例が受けられるかどうか?
質問形式で小規模宅地(特定居住用)の特例が受けられるかどうかについて紹介します。
<質問1>
被相続人である親の実家と、長女である自分の住いとは別ですが、高齢の親では家事も大変なので、平日は自分の家にいますが週末は実家に泊まり家事を手伝っています。このような場合はこの特例は受けられるでしょうか?
<答1>
この特例が適用されるには、その親族が相続開始の直前において、被相続人と同居していることが条件です。この場合の「同居」とは、どのような状態を指すのかが問題となります。
小規模宅地の特例における「同居」の意味は、一つの建物で日常生活を一緒に送っているということです。
長女の平日は自分の家、週末だけ実家ですごしているというような状態は、同居とは言えないので小規模宅地の特例の適用を受けることはできません。
<質問2>
長男である自分は独身で、被相続人である親の実家に住民票を置きそのままにしていますが、実際の住まいは職場に近いマンションを借りて住んでいます。住民票があれば親と同居していたことにはならないでしょうか?
<答2>
小規模宅地の特例における「同居」の意味は、<質問1>と同様に、一つの建物で日常生活を一緒に送っているということです。住民票だけ移しているような状態も同居とは認められません。実際に一緒に生活していることが必要です。
<質問3>
東京で被相続人と一緒に暮らしていた長男(妻、子供あり)ですが、会社から大阪への転勤を言われ仕方なく家族と一緒に一時的に大阪へ引っ越しました。転勤は一時的なのですが被相続人と同居していたことにはならないのでしょうか?
<答3>
家族と一緒に引越しをしていた場合には特例は適用になりません。
単身赴任の場合は、家族が住み続けているため、単身赴任が解消されれば、長男は妻と子供と一緒に暮らすことが可能なので、生活の根拠が被相続人の自宅にあったと考えられ特例が適用されます。
<質問4>
父と実家で同居していましたが、父が要介護3になり、介護の関係から1年程前から介護付き有料老人ホームに入居しました。亡くなった日はホーム入居後で父と同居していませんでしたが小規模宅地等の特例を受けることはできますか?
<答4>
亡くなった日に老人ホームに入居している場合でも、次の要件を満たせば、老人ホームに入居する前に住んでいた宅地等は、被相続人が住んでいた宅地等になります。
①被相続人が亡くなる前に要介護認定、要支援認定又は障害支援区分の認定を受けていたこと
②被相続人が(特別)養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅等又は障害者支援施設等に入所していること(施設による分類の規定があります。民間のシニアマンションなどで規定外になる場合もあります)
③被相続人が②の施設に入所後、その宅地等が事業用又は新たに被相続人等以外の人の居住用になっていないこと
上記要件から、質問のケースは基本的に特例の適用が受けられます。
<質問5>
二男である私は親と一棟の2世帯住宅に住んでいます。住宅は1階に親が住み、2階に自分たち家族が住んでいます。構造的には1階と2階が分離独立し内部で行き来はできません。所有上の権利登記は共有になっています。2世帯住宅で私の場合は、私は親と同居しているといえますか?
<答5>
2世帯住宅では、平成25年度の税制改正より、同居の判定は建物の構造ではなく、建物が区分所有登記をしているかどうかで同居の判定が変わります。
建物の区分所有登記をしている場合、親と同居していないと判定します。
建物の区分所有登記をしていない場合、親と同居していると判定します。
したがって、2世帯住宅が、構造上独立しているかどうかは同居の判定に影響を与えません。区分所有していなければ親と同居していると判断され、特例の適用ができます。
この場合は特例が適用できます。
<質問6>
長男である私は母と同居しています。兄弟姉妹は弟1人と妹が1人いますがそれぞれ別の場所に住んでいます。このたび母が亡くなり、弟・妹と遺産分割の協議をしていますが、財産の大部分が自宅のため私が自宅を相続したいと思っていますが、弟と妹が不公平だと主張し相続税申告期限までに分割協議がまとまりそうにありません。この場合は特例の適用を受けることができるでしょうか?
<答6>
相続税申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は、小規模宅地等の特例を受けることはできません。
ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することにより、相続税の申告期限から3年以内に分割協議がまとまった場合には、小規模宅地等の特例を受けることができます。
まとめ