TOP > 不動産売却の基礎知識 > 相続 > 相続トラブルのよくある事例と対策
相続トラブルのよくある事例と対策
相続トラブルのよくある事例と対策
相続は、今まで仲の良かった兄弟姉妹間に利害関係の対立をもたらし、争族と言われる争いに発展することがよくあります。相続トラブルが実際に起きると骨肉の争いになり、相続手続きが泥沼化してどうにもならなくなってしまうこともあるでしょう。相続トラブルはどのような場合に良く起きるのかと、その対応策について考えます。
目次
1. 不動産を所有している場合のトラブル事例と対策
(1) 不動産が自宅しかない場合
(2) 財産の大半が不動産の賃貸マンションの場合
2. 親と同居し介護をしてきた子などの相続人がいる場合のトラブル事例と対策
3. 離婚歴があり、前妻の子と後妻の子がいる場合のトラブル事例と対策
4. 父が母の死亡後、高齢になってから若い後妻と結婚した場合のトラブル事例と対策
5. 内縁の妻の場合のトラブル事例と対策
6. 子供がいない夫婦の場合のトラブル事例と対策
7. 特定の相続人が被相続人から多くの資金援助を受けていた場合のトラブル事例と対策
まとめ
1.不動産を所有している場合のトラブル事例と対策
相続トラブルの多くに不動産が関係する場合があります。不動産は現預金と違ってすぐに分けたり譲渡したりすることが難しく、また実際の居住状況や共有の有無等によっても様々なトラブルが発生します。
(1) 不動産が自宅しかない場合
不動産が自宅一つしかなく金融資産が少ない場合には、どうしても被相続人と同居する子などの自宅を相続する相続人の相続割合が多くなり、他の相続人に不平等な内容になってしまいます。
自宅が空き家であれば、売却して換金したお金を分けることもできますが、特定の相続人が居住しているケースでは売却も難しく、相続トラブルに発展しがちです。
対策としては、次のようなものがあります。
1つには、被相続人が、自宅に同居する子に、預貯金などをその他の子などの相続人に相続させるという内容の遺言書を残す方法があります。
2つには、同居する子が自宅を売却し現金化し、子同士で分け合う方法です。換価分割という方法です。
(2) 財産の大半が不動産の賃貸マンションの場合
不動産は現預金と違い分割が難しく、共有状態にしたとしても後々に権利関係でトラブルになりやすい財産です。自宅以外に自宅よりも規模の大きい賃貸マションなどがあり収益性がある場合は、相続を希望する人が重なる危険性があります。
対策としては、
1つには、不動産全体を共有化し、賃貸収入を分割する方法があります。
2つには、賃貸マンションの部屋ごとに区分所有化し分割化した持ち分とし、それぞれの管理で部屋ごとの収入を得る方法があります。
2.親と同居し介護をしてきた子などの相続人がいる場合のトラブル事例と対策
親と同居し親の面倒や介護をしてきた子がいる場合には親との距離が近いため、同居していない子と相続発生後にトラブルになる可能性が高くなります。
一方他の子は、面倒を見てくれたことには感謝しても相続は法定通りの平等な配分を主張します。中には、同居していた分、住居費や生活費も浮いただろうし金銭的援助も受けただろうから、むしろ同居していない子の方が多くもらう権利があると言い出す人もいます。お互い自分のことしか考えないので、妥協点を探すことはなかなか難しい場合があります。
民法では、亡くなった人の財産の維持・増加に特別の貢献があった場合に「寄与分」という特別の権利や、民法改正で長男の嫁など相続人以外も対象となる「特別寄与料」の規定も加わりましたが、単に介護をしていただけでは不十分で、特別の寄与としての位置づけが必要となり、かつ、金額も十分とは言えない現状があります。
対策としては、
1つには、被相続人が遺言書で介護相当を遺産配分で考慮する形にする方法があります。
2つには、介護をしてきた相続人側で介護の記録を残し、またかかった費用の領収書を残して相続後に他の相続人に相続加算を要求できる資料を用意しておくことです。
3つには、被相続人が生命保険に加入して受取人を渡したい人に指定しておけば、確実に渡すことができます。
3.離婚歴があり、前妻の子と後妻の子がいる場合のトラブル事例と対策
被相続人に離婚歴がある場合、前妻の子や後妻との関係等で相続に大きな影響を及ぼします。父に離婚歴があり、前妻の子の存在を後妻の子に知らせていなかったため、父の相続発生後に初めて前妻の子が出現し相続トラブルになるケースなどが考えられます。また、前妻の子がいることを知っていても面識がないことにより、相続発生後にそれぞれが権利を主張して争いごとに発展しやすくなります。
対策としては、遺言書の作成が必須となるでしょう。遺言書があることで双方の子が顔を合わせることなく相続手続きを進めることができます。
4.父が母の死亡後、高齢になってから若い後妻と結婚した場合のトラブル事例と対策
相続が発生する1年前に父が若い女性と再婚した場合、子は「結婚は後妻の父の財産狙いが動機だ」と主張し、相続トラブルに発展する場合があります。
対策としては、やはり遺言書の作成となるでしょう。子の立場からは結婚について反対意見は述べても最終的には本人の自由となってしまいます。
5.内縁の妻の場合のトラブル事例と対策
内縁の妻、つまり婚姻関係にない男女は、法律上夫婦とは認められず、基本的には相続権が発生しません。
対策としては、遺言書の作成は必須です。
もしくは、正式に婚姻届を提出する方法になります。
6.子供がいない夫婦の場合のトラブル事例と対策
相続は子がいると財産は配偶者と子に遺産配分されますが、子がいない夫婦の場合には配偶者以外の相続人の範囲が広くなり相続トラブルに発展する可能性が高くなります。
夫が被相続人で夫婦間に子がいない場合には、被相続人の相続の第二順位の親や祖父母が相続人となり、親や祖父母が他界している場合には、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。妻側からすると自分とは血縁関係がなく疎遠であることが多いため、夫の財産の一部が夫側の親族にわたることに納得がいかず争いごとに発展してしまうケースです。
法定相続人である被相続人の兄弟姉妹は1/4の権利を主張することが可能です。
対策としては、遺言書を作成することで子がいない相続トラブルを解決できます。
特に被相続人の「兄弟姉妹には遺留分がないため、全ての財産を妻に相続させるという内容の遺言書があれば全てを妻が相続することが可能」となります。
7.特定の相続人が被相続人から多くの資金援助を受けていた場合のトラブル事例と対策
兄弟姉妹のうち一人だけが、留学資金などの教育資金を援助してもらっていた場合や、結婚資金や住宅購入資金などで大きな金銭的援助を受けていた場合です。もらった方は、自分だけが特別な援助を受けたとの意識はなかったりするのですが、援助を受けていない他の人からは依怙贔屓(えこひいき)があると思われている場合があります。
対策としては、生前贈与に当たると思われる場合は、遺産分割協議で主張し、他の相続人は相続分から生前贈与分を差し引いて計算するなどの主張が可能です。
まとめ