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相続時の「特別受益制度」とは? PART2
相続時の「特別受益制度」とは? PART2
(PART1より)
目次
1. 相続時の特別受益制度について
(1) 相続時の特別受益制度とは
(2) 誰に、どのような目的で、贈与すれば特別受益になるか
2. 「特別受益の持戻し」の制度
(1) 特別受益の持戻しとは
(2) 特別受益の持戻しに時効はない。
(3) 特別受益の持戻しは他の相続人が主張する。
(4) 特別受益の持戻しは免除できる。
(5) 相続税の申告では持戻しのルールが異なる。
まとめ
2.「特別受益の持戻し」の制度
共同相続人の中に特別受益を得ていた者がいる場合、法定相続分のまま遺産分割するのでは不公平が生じてしまいます。そこで、各相続人間の公平を図るため、特別受益分を考慮したうえで具体的相続分を算定する「特別受益の持戻し」という制度を設けています。
(1) 特別受益の持戻しとは
特別受益の持戻しとは、相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分または指定相続分から特別受益や寄与分遺贈又は贈与の価額を控除した残額を相続分とするものです。
【例】
相続財産として3,500万円、相続人は妻と子供が長男と長女の2人で、被相続人は生前、長男に住宅購入資金の援助として500万円を贈与していました。
①みなし相続財産
相続分を算定する基礎は相続財産3,500万円+贈与額の500万円の合計の4,000万円です。
これを、みなし相続財産といいます。
②法定相続分
このみなし相続財産4,000万円に対して、長男の法定相続分は4,000万円の子供分の2分の1の2,000万円の、さらに半分の1,000万円です。
③具体的相続分
②で算出した額から特別受益を得た長男は500万円の贈与(特別受益)を受けていたので、1,000万円から500万円を差し引いた500万円が具体的相続分となります。
(2) 特別受益の持戻しに時効はない。
特別受益の持戻しには時効がありません。
ただし、民法の改正により、遺留分を計算するときの特別受益の持戻しは、相続開始前10年間のものに限定されています。
なお、遺留分とは、最低限相続できる遺産の割合として配偶者、子、直系尊属(両親、祖父母など)に定められるものです。
(3) 特別受益の持戻しは他の相続人が主張する。
遺産分割で特別受益を相続財産に持戻すには、特別受益のない相続人がそのことを主張しなければなりません。通常、特別受益者が自ら相続分の減額を申し出ることはないからです。
特別受益を主張するときは、特別受益の時期と金額を明らかにする証拠が必要になります。
遺贈や死因贈与による特別受益であれば、遺言書や贈与契約書が証拠になります。
生前贈与による特別受益であれば、贈与契約書のほか通帳や預金口座の記録、登記事項証明書(登記簿謄本)などが証拠になります。
(4) 特別受益の持戻しは免除できる。
特別受益は遺産分割のときに相続財産に持戻すことが原則ですが、持戻しをしないように定めることもできます。これを持戻しの免除といいます。
被相続人が生前贈与について遺言などで持戻しの免除の意思を明示していれば、その贈与は相続財産に持戻さずに遺産分割を行います。
ただし、被相続人による明示がなくても、被相続人に持ち戻しの免除の意思があったことが類推されれば持ち戻しの免除が認められます(黙示の意思表示)。黙示の意思表示があったかどうかについては、被相続人がどのような目的で贈与を行ったか、前後の事情から推測することになります。
(5) 相続税の申告では持戻しのルールが異なる。
特別受益は遺産分割のときに相続財産に持ち戻しますが、相続税の申告では特別受益の持戻しは行いません。生前贈与を受けたときにすでに贈与税の対象になっているからです。
ただし、次の場合は例外となります。
➀遺贈、死因贈与
遺贈と死因贈与については、はじめから相続財産であるものとして相続税を計算します。
②死亡前の3年以内に行われた贈与
③相続時精算課税を選択して行われた贈与
死亡前の3年以内に行われた贈与と相続時精算課税を選択して行われた贈与については、特別受益であるかどうかにかかわらず、贈与時の価額で相続財産に加算して相続税を計算します(生前贈与加算)。すでに贈与税を納めている場合は、相続税の納付額と精算することができます。
まとめ