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老人ホームに入っていた時でも、空き家特例3,000万円特別控除は使えるのか?
―ホーム入所期間中空き家の実家売却でも控除は可能か?―
居住用不動産の譲渡益に対する3,000万円特別控除の制度を相続の空き家にも使える特例があります。いわゆる「空き家特例」と言われるものです。相続人1人につき3,000万円特別控除が可能です。空き家特例が使えると、節税メリットが大きくなります。しかし、親の一方が亡くなった後、残されたもう一方の配偶者が老人ホーム等に入所して実家が空き家になり、もう一方の親の死亡後実家を売却した時にもこの3,000万円の空き家特例が使えるかどうかの問題があります。結論から言えば法改正によりこの場合も特例の適用が可能です。空き家特例は2016年にスタートした新しい制度なのであまり知られておらず、当面令和5年(2023年)までの暫定的な措置なので知っておきたいものです。
目次
1.被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例とは
2.特例を受けるための適用要件
3.被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
4.特例の適用を受けるための手続
まとめ
1.被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例とは
正確には、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、空き家特例)というもので、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年(2023年)12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる制度です。相続空き家の3,000万円特別控除とも言われています。
本来は、3,000万円特別控除は、親が住んでいる実家で親が生きている間に売却すれば自宅扱いになり使えます。しかし親が亡くなった後、空き家となった実家を別居している子供が相続して売却しようとしても、子供にとってその家は自宅ではないため3,000万円の特別控除は使えません。
しかし、現代では、結婚後は親と別居している子供が多いので、親が亡くなると実家が空き家になるケースが多く、空き家が増えるとさまざまな問題が起こるため、空き家を減らすべく、近年新しい制度が設けられました。それがこの相続空き家の3,000万円特別控除の制度です。
空き家特例は適用の条件がかなり厳しくなっており、空き家であれば必ず適用できるというわけではありません。
2.特例を受けるための適用要件
特例を受けるための適用要件の主なものは次のような点です。
特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の要件の全てに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一つの建築物に限ります)をいいます。
(1) 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
昭和56年5月31日以前に建築した建物は、旧耐震基準にもとづいて建築されているので、耐震性が今よりも弱くなっています。本来、空き家特例は、旧耐震基準の建物をできるだけなくすことを目的にしているためです。
(2) 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
戸建てが対象になり、マンションは空き家特例の対象外です。
(3) 売却代金が1億円以下
売却代金が1億円を超えるような不動産については空き家特例の適用が受けられません。
(4) 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
亡くなった人が一人暮らしをしていたことが条件になります。父が亡くなって同居していた母が実家を相続した場合などは該当しません。
一人暮らしの人が亡くなると、家は当然に空き家になります。この空き家特例は空き家をなくすことを目的にしているので、亡くなる前に一人暮らしだったことが条件になります。
(5) 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
その他要件があります。
3.被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋についても、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋は、法改正により、次の(1)から(3)の要件を満たすときは、被相続人居住用家屋として特例の対象になりました。
(1) 次に掲げる事由により、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合であること。
介護保険法に規定する要介護認定若しくは要支援認定を受けていた被相続人が、認知症対応型老人共同生活住居(グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅に入所していた場合
(2) 次に掲げる要件を満たしていること。
①特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその家屋がその被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと。
②特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前までその家屋が事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
③被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること。
(3) その家屋が次の3つの要件全てに当てはまるもの(特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、主として被相続人の居住の用に供されていた一つの建築物に限ります。)であること。
①昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
②区分所有建物登記がされている建物でないこと。
③特定事由により被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
4.特例の適用を受けるための手続
この特例の適用を受けるためには、規定の種類を添えて確定申告をすることが必要です。
まとめ
・一方の配偶者が亡くなった後実家で一人暮らしをしていた他の配偶者が老人ホーム等の施設に入った場合、亡くなって空き家になった実家には空き家特例が使えます。
・被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例とは、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却し、一定の要件に当てはまる場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる制度です。
・老人等入所に関しての居住用家屋の要件
①特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその家屋がその被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと。
②特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、その家屋が事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
③被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること。
・特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件全てに当てはまるものをいいます。
イ. 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
ロ. 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
ハ. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。