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空き家を更地化すると固定資産税が6倍になる問題
空き家を更地化すると固定資産税が6倍になる問題
空き家は使わなくても所有しているだけで毎年固定資産税を支払う必要がありますが、固定資産税には「土地に建物が建っていると土地の面積200平方メートルまでの分について6分の1に減額される」という特例があります。つまり、空き家を解体して更地にするとこの特例の対象外になり、一気に固定資産税の負担額が最大6倍増になってしまいます。さらに固定資産税だけでなく都市計画税も最大3倍増になります。これが老朽化した古家が残り風致上も治安上も悪くなり、かつ空き家物件流動化をも阻んでいると言って良いでしょう。この制度の内容を把握しておきましょう。
目次
1. 不動産には固定資産税と都市計画税がかかる。
2. 空き家を更地にすると土地にかかる固定資産税は最大6倍、都市計画税は3倍高くなってしまう。
3. 元となる固定資産税の制度「住宅用地の軽減措置特例」とは
(1) 「住宅用地の軽減措置特例」とは
(2) 固定資産税と都市計画税の標準的税率
(3) 「住宅用地の軽減措置特例」の内容
(4) 「特定空き家」に指定されると軽減措置は適用されない。
4. 更地化と売却
まとめ
1.不動産には固定資産税と都市計画税がかかる。
空き家には固定資産税がかかります。固定資産税は、その年の1月1日時点で土地や建物を保有している人に課せられる税金です。人が住んでいても空き家でも、支払いの義務が発生します。
固定資産税は地方税に区分されるため、納税通知書は各自治体から送られ、年4回に分けて納付することになっています。土地・家屋の評価は3年に一度、評価替えが行われ、その評価に基づき固定資産税が決定します。
土地や建物の立地する場所が市街化区域に指定されている場合には、固定資産税のほかに都市計画税の支払いも必要です。
都市計画税は、都市計画事業又は土地区画整理事業に要する費用に充てるために、目的税として課税されるものです。
課税の対象となる資産は、都市計画区域のうち市街化区域内に所在する土地及び家屋で、納税義務者は毎年1月1日現在の土地又は家屋の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている人です。
2.空き家を更地にすると、土地にかかる固定資産税は最大6倍、都市計画税は3倍高くなってしまう。
固定資産税は、建物と土地の両方に対して課されるので更地にすれば建物に対してかかる固定資産税はなくなると考えがちですが実態は違います。固定資産税の計算上、「住宅」となっている場合には、空き家を解体することは、宅地が「住宅用地」ではなくなってしまうことで、固定資産税の負担増加に繋がります。固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍高くなってしまい、トータルとして支払う税金が高くなってしまいます。
このような課税体系が空き家が取り壊されることなく放置されている現状に拍車をかけ、節税対策として、空き家であっても建物を残した状態にしておくのです。
3.元となる固定資産税の制度「住宅用地の軽減措置特例」とは
(1) 「住宅用地の軽減措置特例」とは
不動産を所有していると発生する固定資産税ですが、住宅用地に関しては固定資産税の課税標準を減額する特例があります。土地に対する固定資産税が課税される年の1月1日(賦課期日)において、住宅やアパートなど、人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地(住宅用地)については、特例措置があり税金が軽減されています。
古家でも住宅が建っている住宅用地であれば課税標準(固定資産税評価額)を3分の1に減額するほか、特に200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)に対する課税標準は6分の1に減額することとされています。建物が無い状態である更地にはこの特例が適用されませんので、固定資産税は家が建っている状態のものより最大6倍かかるという計算になります。
(2) 固定資産税と都市計画税の標準的税率
①固定資産税の税率
固定資産税の税率は1.4%が標準税率です。
*固定資産税=課税標準(固定資産税評価額)×1.4%
税率は1.4%が標準ですが、自治体が個別に定めることもできます。そのため1.5%や1.6%に設定されていることもあります。
②都市計画税の税率
都市計画税の税率0.3%は制限税率です。
*都市計画税=課税標準(固定資産税評価額)×0.3%
都市計画税の税率0.3%は制限税率で、自治体は0.3%を超えない範囲で独自に税率を設定できます。対象の不動産がある自治体の税率がどうなっているか、まず確認をしておきましょう。
(3) 「住宅用地の軽減措置特例」の内容
特例は、標準税額に特例率を乗じて、本則課税標準額を算出します。
①小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル以下の部分)
・固定資産税:課税標準価格×1.4%×1/6
・都市計画税:課税標準価格×0.3%×1/3
②一般住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートルを超える部分)
・固定資産税:課税標準価格×1.4%×1/3
・都市計画税:課税標準価格×0.3%×2/3
※アパート・マンション等の場合は、戸数×200平方メートル以下の部分が小規模住宅用地となります。
この特例では土地の上に建っている家に人が住んでいるかいないかは問われません。建物があるかどうかで判断されますので、たとえ空き家であっても住宅用地として認定されれば、その土地にかかる固定資産税は更地であるよりは格段に安くなります。
(4) 「特定空き家」に指定されると軽減措置は適用されない。
管理が不十分で放置されているような空き家が行政から「特定空き家」に指定された場合は、住宅用地の軽減措置の特例の対象外となってしまいます。
特定空き家とは、2015年に施行された「空家等対策特別措置法」に基づき、自治体が調査し、国土交通省がガイドラインとして示している一定の条件に該当した場合に指定されます。
4.更地化と売却
税制上メリットのない更地化ですが、売却する場合は更地化したほうがプラスなのは言うまでもありません。建築から築年数が経っていなければ、そのまま中古住宅として売り出すことも可能ですが、相続によって受け継いだ住宅は、築年数が相当経っているケースがほとんどでしょう。
買主側の視点で考えれば、土地として購入し、新たに好みの住宅を建てたいというニーズがあります。また、多くの場合、「古家あり」で土地を売り出すより、更地のほうが高く売却できる可能性があります。古家があれば印象が悪く解体費もかかります。
空き家のまま所有していては、万一に備えて、火災保険への加入も必要です。空き家が遠方にある場合や、多忙でなかなか建物の管理が難しい場合、管理を不動産会社や管理会社に依頼するとなれば、管理コストもかかってきます。売却はこうした維持管理にかかるコストを省くためにも有力な選択肢です。
まとめ
・不動産には固定資産税と都市計画税がかかります。空き家を更地にすると土地にかかる固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍高くなってしまいます。これは税制の「住宅用地の軽減措置特例」によるためです。
・住宅用地の軽減措置特例による税額
特例は、標準税額に特例率を乗じて、本則課税標準額を算出します。
①小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル以下の部分)
固定資産税:課税標準価格×1.4%×1/6、都市計画税:課税標準価格×0.3%×1/3
②一般住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートルを超える部分)
固定資産税:課税標準価格×1.4%×1/3、都市計画税:課税標準価格×0.3%×2/3
・「特定空き家」に指定されると住宅用地の軽減措置特例は適用されません。
・税制上メリットのない空き家の更地化ですが、売却する場合は更地化したほうが売りやすいのは言うまでもありません。