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相続税の延納制度 PART1
相続税の延納制度 PART1
相続税が高額になった場合や納税資金が乏しい時はどうしたら良いかですが、国税庁では一括の金銭納付を第1としながらも、特例として金銭における延納という制度を設けています。しかし、延納では要件もあり利子も付きます。延納制度の内容、適用条件、注意点などを紹介します。
目次
1. 相続税の延納制度について
(1) 相続税の延納制度とは
(2) 相続税の計算と納付方法の検討
2. 延納制度の要件
(1) 延納の要件
(2) 利子税
(3) 「特例割合」の利率
(4) 延納できる期間
(5) 標準的な審査期間等
(6) 連帯納付義務
3. 相続税の延納の注意点
(1) 延納でも納税額を払っていけるのか?
(2) 延納では税額に相当する担保を提供しなければならないこと。
(3) 担保物件の掛け目
(4) 延納できる期間の制限
(5) 利子税
まとめ
1.相続税の延納制度について
(1) 相続税の延納制度とは
相続税の延納制度とは、相続税の納付の方法は金銭による一括納付(金銭納付)が原則ですが、一括納付が難しい場合は、相続財産の状況や相続人の所有している財産の状況、収入や支出の状況及び近い将来(おおむね1年以内)における臨時的な収入や支出の状況を踏まえて納付資力の確認の上、税務署に認められれば、年賦による分割納付を可能とする制度です。
(2) 相続税の計算と納付方法の検討
相続税額を計算した後に、税の納付方法を検討します。
①金銭納付の検討
納付方法の検討に当たっては、まず、金銭による納付の可否を検討することになります。
納期限等までに金銭により相続税の全額を納付できるかどうか、できない場合、納期限等までに納付できる金額はいくらかを算定します。
期限内に金銭で全額を納付することが困難な場合は、一定の年数の年賦による分割納付を行うことができるかどうかを算定します。
②延納による金銭納付
納期限等までに金銭で一時に納付することが困難な場合には、その困難な金額を限度として、一定の要件の下で、年賦による分割納付を行うこと(延納)ができます。
・延納のできる期間
課税相続財産に占める不動産等の割合に応じて5年~20年間となっています。
・利子税
延納する相続税額に対しては利子税がかかります。
延納の許可を受けた後に延納を継続することが困難となった場合には、認められれば一定の要件の下で物納に変更することができます。
2.延納制度の要件
延納制度の要件は次のようなものです。
(1) 延納の要件
a. 相続税額(贈与税額)が10万円を超えていること
b. 金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
c. 「延納申請書」及び「担保提供関係書類」を期限までに提出すること
d. 延納税額に相当する担保を提供すること
(延納税額が50万円未満で、かつ、延納期間が3年以下である場合は担保を提供する必要はありません。)
(2) 利子税
税金のこの納付期限を過ぎて納税した場合には、税金本体の金額に加え、いわゆる利子に相当する税が課され、併せて納付することになります。これを利子税と呼びます。延納できる期間及び延納にかかる利子税の割合は、相続財産に占める不動産等の割合に応じて定められています。
また、利子税に関連したものとして延滞税というものがあります。延滞税も利子税と同じように納期限を経過してから納税をした場合に課税されるのですが、事前に税務署の許可を受けている利子税と異なり、納期限を遅延してよい理由がないと考えられることから罰金的な意味合いが強くなっています。
利子税の税率は2018年1月1日以降、年1.6%として計算されます。
延納や物納の場合の利子税は、この年1.6%を基準に、相続財産の状況に応じて別途定められています。
延滞税の税率は、罰金的な意味合いが強いので利子税より高い率になっています。
*国税庁「相続税の延納」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4211.htm
(3) 「特例割合」の利率
資産における不動産の割合に応じて、延納利子税割合に対して年利に「特例割合」の利率が定められています。なお、特例割合は年により変動しますので税務署に確認してください。
a. 不動産等の割合が75%以上の場合
ア. 動産等に係る延納相続税額
延納期間 (最高10年) 延納利子税割合 (年割合5.4%) 特例割合0.4%
イ. 不動産等に係る延納相続税額
延納期間 (最高20年) 延納利子税割合 (年割合3.6%) 特例割合0.4%
ウ. 森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に係る延納相続税額
延納期間 (最高20年) 延納利子税割合 (年割合1.2%) 特例割合0.1%
b. 不動産等の割合が 50%以上75%未満 の場合
ア. 動産等に係る延納相続税額
延納期間 (最高10年)延納利子税割合 (年割合5.4%) 特例割合0.7%
イ. 不動産等に係る延納相続税額
延納期間 (最高15年)延納利子税割合 (年割合3.6%) 特例割合0.4%
ウ. 森林計画立木の割合が20%以上の場合の森林計画立木に係る延納相続税額
延納期間 (最高20年)延納利子税割合 (年割合1.2%) 特例割合0.1%
c. 不動産等の割合が 50%未満 の場合
ア. 一般の延納相続税額
延納期間 (最高5年)延納利子税割合 (年割合6.0%) 特例割合0.8%
イ. 立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額
延納期間 (最高5年)延納利子税割合 (年割合4.8%) 特例割合0.6%
以下略
(4) 延納できる期間
相続税の延納税額が150万円未満の場合には、不動産等の価額の割合が50%以上であっても、延納期間は、延納税額を10万円で除して得た数(1未満の端数は、切り上げます)に相当する年数を限度とします。
例:延納税額125万円の場合の計算方法
125万円÷10万円=12.5≒13 延納期間13年
(5) 標準的な審査期間等
延納申請が行われた場合には、延納申請書の提出期限の翌日から起算して3カ月以内に許可又は却下を行います(これを「審査期間」といいます)。
ただし、延納申請に係る担保財産が多数ある場合や積雪などの気象条件により担保財産の審査ができない場合などには、審査期間を最長6カ月まで延長する場合があります。
(6) 連帯納付義務
相続税の納付については、下記の場合を除き、各相続人等が相続又は遺贈により受けた利 益の価額を限度として、お互いに連帯して納付しなければならない義務があります(相続税法第34条第1項)。
・本来の納税義務者の相続税の申告書の提出期限等から5年以内に、相続税法第34条第6項に規定する「納付通知書」を発していない場合
・本来の納税義務者が延納の許可を受けた相続税額に係る相続税
・本来の納税義務者が農地などの相続税の納税猶予の適用を受けた相続税額に係る相続税
*国税庁「相続税、贈与税延納の手引」
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/pdf/3001tebiki01.pdf
(PART2へ続く)